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2008/03/10 Monday 09:15:29 JST |
ライフストーリーという素敵な絵本がある。 宇宙の誕生に始まり、地球の進化の歴史が舞台仕立てで展開していく。息子の太陽お気に入りの本だ。 太陽はカンブリア紀のページに出てくる三葉虫を見つけ、 「デンデン!」と叫んだ。 今夜は息子との風呂に三葉虫の化石を連れ込んだ。 お湯をはった洗面器に三葉虫を入れた太陽は、 「デンデン、イタ!」とご満悦な様子である。 ちょっとパパにかしてよ、と言っても、首を振るばかりで渡してくれない。 この、デンデンならぬ三葉虫の化石は、 役者の緒形拳さんがペルーのチチカカ湖のほとりで見つけたものだ。 これぞと思う黒い石の塊を拾って叩き割ると、パカッと中から三葉虫が現れるのだそうだ。 これに結構はまったらしい。 その中でも、これが一番大きいやつなんだといいながら、 ポケットからおもむろに三葉虫を取り出し、ぼくに手渡した。 NHKドラマ「海の群星」で共演し、約1ヶ月の間八重山諸島に滞在しながら、 ウミンチュとしてすごした撮影後のことだった。 この、三葉虫の化石が、ある時、思いもよらぬ体験をプレゼントしてくれた。 それは、ペルーのシャーマンが使うアヤワスカというメディスンを使ったセレモニーを、 自宅で執り行っていたときのことだ。 三葉虫を手に握り締めながら、ぼくは、唐突に三葉虫が泳ぎ回るただ中にいたのだった。 濃密な大気(それは今海と呼ばれている)の中で、 たくさんの足を前に後ろに動かして、一生懸命に泳ぎまわる。 仲間たちもたくんいる! その、なんという誇り。そして喜び! 繁殖のための交歓。 その電気的で純粋な悦び!! まるで、博物館の展示で立体映画を観ているように、展開していく光景を見ながら、 三葉虫の気持ちに共感していた。 三葉虫の声が脳の中響きわたる。 「自分たちは、イタ!」 「地球の進化のために、役割を果たした」 「次のモノたちにバトンタッチして、自分たちは消えた」 「そのことを、知っていてほしい」 気がつくと、もとの世界に戻っていた。 あれ以来、4億5千年前の地球にイタという三葉虫たちのことが、 リアルなものになった。 (ひとつ、秘密を明かそう。 ぺヨーテソングを唄うとき、ウォータードラムの中には、水と共に三葉虫の化石を入れている。 ウォータードラムのワンビートが打ち鳴らされると、ケトルがうなりだし、倍音が発生する。 耳鳴りのような、ゾクゾクする不可解な音が聞こえ出す.....。 周りに、何かの気配がする。来たな!とひそかに思う。 ....あなたも、ぜひ今度聞いてみるといい。) その後、NHKドラマ「聖徳太子」の撮影で久しぶりに拳さんに出会った機会に、 三葉虫との交感の体験談をした。 「荒井らしいエピソードだ」と拳さんは言った。 撮影終了後。 今度は茶封筒を渡された。 その中には、まだ、カチ割っていない黒い石の塊が入っていた。 「なるほど、この中に三葉虫が眠ってイルわけか」 わざわざ4億5千年の眠りから三葉虫を叩き起こす気はなかった。 そうだ。いつかまた、交感しあえることもあるだろう。 その黒い石の塊は、いまだに、黒い石の塊のままだ。 つづく Frozen In Rock by tarotastic http://flickr.com/photos/tjt195/37305041/ |
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2008/03/10 Monday 09:13:01 JST |
霜がおりだしたある冬の朝。 庭のカリンの木の下に、黄色く実ったカリンの木がごろごろっと転がっていた。 あぶらっぽい実をつかんで、約束されていたかの様に鼻に近づけてみる。 生々しいカリンの香り。柑橘系のようにパーッと広がる香り方ではない。 おおげさじゃないというより、むしろ遠慮がちな香りが漂っていた。 さて、この実をどうしよう? 種取り用の実を残して、風呂に入れてみることにした。 もうずぐ2歳に成る息子と、カリンが待つ風呂に入る。 プカプカと呑気に浮きながら、相変わら静かな香りを漂わせている。 そのとき、僕と息子は同時に気がついた。 カリンがプチプチと微かな音を出して呟いているのだ。 初めて聞くみょうちくりんなカリンことば。 カリンを手にとって息子の耳に近づけてやる。 ジジ。ジ。ジージジ。 僕も別の実を耳に持っていく。 プチ。チチチチ。プップップッチ。チッチ。 僕たちは思わぬカリンの合唱にドット笑った。 別次元からやってきた宇宙人のようなカリン達の鼻唄に、 深い海の底に沈んでいた記憶の箱が開いた....。 ..あれは、奄美大島の南にあるカケロマ島での最初の夜だった。 カケロマ島にたどり着いてすぐに意気投合した里さんが建てた貝の博物館が、 その夜のぼくの宿だった。 寝袋を広げて転がりながらも、神経が昂ぶり寝付けずにいた。 女たちが歌う島唄が微かに聴こえていた。。 里さんが昼間、聞いていたネーネーズのCDがかかっているのだろう。 はじめはそう思っていた。 音楽を止めようと思って、ステレオ装置を確認しに行った。 あれ?おかしいな??電源はOFFに成っているぞ。 どこからともなく聞こえてくる、漂う空気に溶け込むような島唄に、じっと耳を傾けてみる。 同じフレーズを何度も何度もリフレインしながら、 気がつくと今さっきのメロディーと違うものに変化していく。 これは、人間の唄とはちがう。 もしかして? ぼくは、あたりを見回してみた。 貝。貝。貝。右を向いても左を見ても貝が置いてあった。 当たり前だ。ここは貝の博物館だ。 カケロマは日本でも有数の微小貝の産地、貝の多様性のセンターなのだ。 貝が唄っている。 それしか、考えられなかった。 そのとき、はっと気がついた。 唄うという字は、口に貝と書くではないか! 戦慄した。 貝が島唄を唄うことをぼくは理解した。 何か祝福のようなものとして、僕は受けとめていた。 次の朝、里さんに自分の体験を話した。 里さんは満足げに笑みを湛えながら、 「そういうことは、あるでしょうねー」と言った。ような気がする。(記憶が怪しい) その後、ぼくはカケロマ島に移住することになるのだが、 その話は、またの機会にゆずろう。 ところで、僕の息子は、何でも楽器だと思っているふしがある。 というより、そのように育てられたふしがある。(親の顔がみたい?) ストーブの柵、映写用のスクリーン、思わぬものを楽器として楽しんでいる。 石油ストーブに火をつけると、だんだんと温まっていきながら、カン。カン。と音をたてる。 その音のピッチは段々と早まっていく。 まるで、ぺヨーテソングのウオータードラムのワンビートの様に。 息子はその音に合わせて、なんと、踊る。 世界は不思議な音に満ちている。 いや、音が世界を創造している。 音は生きている。 空間も生きている。 僕たちは、その実相をよく知らない。 僕たちは、ただ世界に耳を澄ます。 |
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